岩国さん。 [【闘病】 闘病日誌]

先日外科外来で、一年近くぶりに再会したのが、僕が勝手に「岩国さん」とあだ名をつけた、女性の看護師さん。外科外来では普段、病棟の看護師さんとは会えないのだが、この日はたまたま、入院する患者の案内で外来に来ていたらしい。

「よお!」いつもと変わらず、岩国さんはそう言った。

年のころは自分と同じくらいか、ちょっと上か。
初めて入院したときから、この看護師さんは絶対将来の看護婦長さんに出世する!と思った。そう思ったのは理由がある。もちろん、他の外科病棟の看護師さんたちも患者さんにとてもよく接してくださる人たちばかりなのだが。

  ◇

長い(?)付き合いで40人近くの名前を覚えてしまった自分だが、この看護師さんだけ、いつも名札がなかった。けれど一番良く会話したのは、この看護師さんだったように思う。ごつい体型のわりに機敏で、精力的に動いていた。

岩国から車をぶっ飛ばして、廿日市に毎日通っていたらしい。「この病院も運営大変みたいよ、ガハハ」なんていつも体をゆらして、黒ぶちメガネをくいっと手でやりながら、言っていた。

非常に気のつく人で、ベッドのままで髪を洗うことが出来るなんて知らなかった僕だが、この看護師さんのおかげで、ベッドのまま髪を洗うことが出来た。この看護師さんがいなかった五回目の入院のときも、自分で頼めば看護師さんは髪を洗ってくれたし、その他のこともやってくれたが、超忙しそうなのでどうしても遠慮してしまう。この看護師さんは先にどんどんやってくれたので、助かった。

僕が差し入れの文芸春秋を読んでいると、「そんな難しい本を読んでからに!」と言って「はいよ!」と持ってきたのが、何冊もの少女マンガだった。「えええーいらんし!」と、言っておいた。

苗字は知っていたけどあえて、「なんで名札つけんのん」とつっこむと、「名乗るほどのもんじゃないけえ」と笑った。「じゃあ看護師さんを呼べんけぇ、勝手にあだ名つけるけー。岩国から通っとるから今日から岩国さんって呼ぶね!」

岩国から通っているということ以外にも、20%くらいは別の由来があるのだが、それは内緒。この日記を丹念に読んだらなんとなく察してください(笑)

「じゃああんたはユキさん!」負けずに言い返された。湯来から来たから?

 
二度目の入院のとき、「よお!いらっしゃい」と言われた。
負けずに「いやいやはじめましてでしょ」と言っておいた。

同室のほかの患者さんたちに接している姿を見ていた。
Aさんには「ゆっくりでいいですけんね」
Bさんには「はい、じゃあ絶食ですから、しばらくつらいけど頑張りましょう」
Cさんには「何お菓子食べよるん、いけんて!」

患者の性格を悟り、患者に合わせて言葉や対応を選んでいた。人それぞれ、元気になる言葉は違うんだと思う。それを短い間で一瞬で見分けるのは、すごいと思った。柔にして剛。しかもとても気のつく人で、患者が何も言わなくてもわかるようなところがあった。私には絶対「頑張ろう!」とか言わない。おかげで、とても気が楽だった。どつき漫才みたいなことをしながら、いつしか闘志(病気への)が沸いていた。

三度目に入院したとき、「またかい!」って笑われた。
「またですが、何か?」と言っておいた。
「shizmmyさんはエアマットだから」と、勝手知ったる岩国さんはてきぱきと動いてくれた。

四度目に入院した昨年の五月、緊急入院した時にちらっと見かけただけで、次の日から岩国さんはいなかった。「Fさんは異動?」と聞くと、長期研修に出かけたらしい。「大丈夫ですよ、あとは時間がたつのをゆっくり待ちましょう」という看護師さんに囲まれて、過ごした。

  ◇

「半年の研修、どうだった?」
「くたくたよー毎日涙と汗ズビズバで勉強したんよ。やせたやせた」
「やせた?全然変わってないよ、残念ながら」

「また会おう!」岩国さんは言った。
「何いいよるん!今年は岩国さんに会わないことが目標なんじゃけ!」
「ハハ、それもそうか」岩国さんはごつい体をゆすって、豪快に笑った。

でも多分、また顔合わせると思う。そん時は「お名前誰さんでしたっけ?」から始めてね。きっと私、「ジョニー・デップです。違うかぁぁ!」ってやるから。
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